水憲法審議の概要 1 水憲法(仮称)制定委員会の構成 会長 岡 道也(九州芸術工科大学助教授) 副会長 江口 豊治(市議会総務常任委員長) 委 員 21人  市議会議員4人 学識経験者4人 市内各種団体の代表8人         行政関係者5人 2 審議の経過 平成9年5月2日   第1回委員会 ・水憲法(仮称)制定委員会の発足 平成9年7月2日   第2回委員会 ・起草委員会の設置(委員長:今里 滋九州大学法学部                  教授、9人) 平成9年9月9日   第1回起草委員会 平成9年10月14日  第2回起草委員会 平成9年11月20日  第3回起草委員会 平成10年3月3日 第3回委員会 平成10年6月26日  第4回委員会 ・市長への報告 3 「柳川市掘割を守り育てる条例」(愛称:水憲法)の主なねらい  (1)市の掘割に関する施策の総合化   掘割や景観の保全に関する条例として、用排水路管理条例や伝統美観保存条例などい くつかの条例や規則、要綱があり、各課で対応しているが、本条例は水環境保全や景観の 保全と創造を総合的にとらえ、掘割を中心とするまちづくりのための行政内部と市民も含 めた統一的な行動の指針とするものである。  (2)生活レベルの規制   用排水路管理条例では、水路の損傷や不法投棄、埋め立てなどを罰則付きで規制して いるが、本条例では生活排水に対する努力義務など軽微なものについても規制の範囲を広 げている。  (3)環境教育の振興   水環境を保全するためには市民の意識の高揚が何よりも重要である。このため市民と 事業者、とりわけ児童・生徒に対する環境教育を推進する。また、「掘割の日」を定め、 掘割清掃など市民参加の行事を行うことにより環境保全の意欲を高めることを規定してい る。  (4)審議会の設置   本条例の推進に必要な事項を調査・審議するため審議会を設置し、市長へ提言する。 柳川市掘割を守り育てる条例 目次 前文 第一章 総則(第一条上第五条) 第二章 水環境保全に関する基本的施策(第六条-第十七条) 第三章 審議会(第十八条-第二十四条)  私たちが住む柳川市は、総延長四百七十キロメートルに及ぶ大小の掘割が網の目のよう に巡り、独特な水郷風景を形成している。この掘割は現代に残された歴史的な文化遺産で あり、それが持つ独特な情緒は詩聖・北原白秋の詩歌の母体ともなった。  掘割は、水をためることにより、降り過ぎた雨水を一時遊ばせて内水はん濫を防いだり 、農業用水や防火用水等に利用されたりして生産や市民生活と直接にかかわる重要な役割 を担っている。この掘割は、先人たちが風土の悪条件と闘い、水と共生していくなかで形 成された貴重な柳川市の歴史的財産である。  これまで本市では、 「柳川市用排水路管理条例」や「柳川市石けん使用推進要綱」な どを制定し、掘割保全の努力を続けてきた。しかしながら、近年の社会経済活動の拡大や 都市化の進展、生活様式の変化などに伴い、本市においても家庭排水や事業所排水等によ る掘割の水質汚濁や景観の変ぼうが進行しており、新たな対応が求められている。  言うまでもなく、すべての人は、健康で安全かつ快適な生活を営むことのできる恵み豊 かな水環境を享受する権利を有すると同時に、こうしたかけがえのない水環境を維持し、 発展させ、将来の世代に継承していく責務と使命を有することを忘れてはならない。  このような認識のもと、私たちは、市民、事業者、市が一体となって、美しい柳川市の 掘割を守り育て、市民が誇り得る郷土を育てることを決意し、水の憲法ともいえるこの条 例を定める。 《説明》  前文は、掘割の歴史と役割、市のこれまでの取り組みなど本条例制定に至った経緯と、 掘割を守っていく理念をうたったものである。 第一章 総則  (目的) 第一条 この条例は、掘割の水質を悪化させている最大の原因であると考えられる家庭排 水や事業所排水等から柳川市の良好な水環境を保全し、及び創造することにより、柳川市 独特の掘割を生かしたまちづくりを進め、もって現在及ぴ将来の市民の快適で潤いのある 生活の確保に寄与することを目的とする。 《説明》 掘割の水質汚濁の最大の原因は、家庭排水や事業所排水であると言われているが、こうい うものから掘割を守り、水環境を保全及ぴ創造するためにこの条例を制定することを規定 したものである。  (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところに よる。  一 「水環境」とは、掘割とその周辺の環境及び景観をいう。  二 「市民等」とは、市民及び本市に滞在する者をいう。  三 「事業者」とは、市の区域内で行う事業について、自ら実施するもの又は契約によ り実施するものをいう。  四 「公共的施設」とは、道路、水道、公園、消防施設、広場、緑地、掘割、河川、医 療施設、教育施設、清掃施設、社会福祉施設等の公共の用に供する施設をいう。 《説明》  この条例の中で使用される用語について定義したものである。  「市民等」とは、市民と旅行や通勤通学等で本市に滞在する者も含まれる。  「事業者」とは、市の区域内で事業を行うもので、民間団体等だけでなく、一部事務組 合等の行政関係も含まれる。  (責務) 第三条 市、市民等及ぴ事業者の三者は相互に協力し、それぞれの責任と自覚を持って掘 割を生かしたまちづくりの推進に努めるものとする。  一 市の責務  イ 市は、良好な水環境の保全及び創造に関し、自然的社会的条件に応じた施策を策定 し、実施しなければならない。  口 市は、掘割の現状に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当た っては、水環境の保全について配慮しなければならない。  ハ 市は、水環境の保全を妨げるような行為に関し、必要な規制の措置を講じなければ ならない、  二 市民等の責務   市民等は、良好な水環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、この条例の目的を達 成するために市が実施する施策に協力しなければならない。  三 事業者の責務  イ 事業者は、その事業活動を行うに当たって、良好な水環境を破壊しないよう自らの 責任において必要な措置を講じなければならない。  口 事業者は、市が実施する良好な水環境の形成に関する施策に積極的に協力しなけれ ばならない。 《説明》  本条は、この条例の目的を推進していくに当たって、市、市民等及び事業者の三者の責 務を規定したものである。市は、掘割を生かしたまちづくりを推進していく上で、取り組 んでいかなければならない基本的な方針を示したものであり、市民等及び事業者はそれら に積極的に協力するとともに、自らも努めるということを規定したものである。  (適用区域) 第四条 この条例は、柳川市全域について適用するものとする。 《説明》  本条は、この条例の適用範囲を規定したものである。掘割は、大きく分けると農村部の 農業用水路としての役割を持つものと、市街地の城堀(観光・川下り)との二つの位置付け ができるが、この両方を含めた市内全域の掘割を対象とするものである。  (掘割の日) 第五条 市長は、市民の水環境保全についての関心と理解を深め、市民参加による水環境 保全活動の意欲を高めるため、「掘割の日」を設ける。 2 掘割の日は、四月の第三日曜日とする。 3 市長は、掘割の日の趣旨にふさわしい事業を実施するように努め、市民等は、それに 積極的に参加するよう努めなければならない。 《説明》  本条は、掘割の水の大切さを市民に再認識してもらう意味から「掘割の日」を設けて、 その日に掘割の清掃や堀干しまつりなど市民参加のさまざまな行事を展開していくことを 規定したものである。 第二章 水環境保全に関する基本的施策  (水質の保全) 第六条 市長は、生活排水等による掘割への負荷を軽減するために必要な施設の整備、生 活排水対策の調査及ぴ立案並びに啓発その他必要な施策の実施に努めなければならない。 2 市民等及ぴ事業者は、市が実施する施策に協力し、自らも生活排水や事業所排水など による掘割の水質の汚濁に対し必要な対策を講ずるとともに、良好な水質を保合するため 、次に掲げる行為に努めなければならない。  一 生活排水や事業所排水を掘割に排出するときは、浄化槽やためます等により排水を 浄化して排出すること。  二 調理くず、廃食用油等の処理を適正に行うこと。  三 洗剤を使用する際、柳川市石けん使用推進要綱(昭和五十六年三月十一日制定)第二 条に定義された石けんを使用すること。 3 何人も、柳川市用排水路管理条例(昭和五十一年柳川市条例第十四号)第四条に掲げる 禁止事項を行ってはならない。ただし、同条中「水路」とあるのは、「掘割」と読み替え るものとする。 《説明》  本条は、掘割の水の水質保全に努めるため、市、市民等及び事業者の三者が努めるべき 事項について規定したものである。  第一項は、市として掘割の水質保全のために、ハード、ソフト両面において努めていか なけれぱならないということを規定している。  第二項は、水質汚濁の最大の原因と言われている生活排水や事業所排水等から掘割を守 るために取り組むべき行為を努力規定として掲げている。  柳川市石けん使用推進要綱第二条に定義された石けんとは、家庭用晶質表示法(昭和三 十七年法律第百四号に表示された「洗たく用石けん」及ぴ「台所用石けん」のことである 。市としては石けん使用推進のため、販売業者に対する要請や市民に対する啓発に努める ことが必要である。  柳川市用排水路管理条例第四条に掲げる禁止事項とは、@水路を損傷すること。 A水路に土、石、竹木、ごみ、汚泥その他の物を投棄すること。B水路の埋立て及び付替 工事をすること。Cその他水路の管理上支障のある行為をすることである。  (流水の確保) 第七条 市長は、良好な水環境を保全するため、上流地域との交流と連携による相互理解 と協力によって流水の確保に努めなければならない。 《説明》  本市が矢部川水系の最下流に位置することからも、水を確保するためには上流地域の協 力が必要であり、このためにも上流地域との交流や連携を常に行いながら、相互理解の上 にたって水の確保に努めることを本条では規定している。  (親水性の確保) 第八条 市、市民等及ぴ事業者は、護岸や柵など掘割の現状に影響を及ぼす施策を実施す る場合は、日常的に水と親しめるような場所の確保及ぴ景観の保全に努めなけれぱならな い。 《説明》 掘割を守っていくためには、市民等に掘割に対する認識を深めてもらうことが重要であり 、そのためには、まず水と親しんでもらうことが必要である。  しかし、掘割の維持管理上、護岸や柵を設置しなければならない場合もあり、そのとき には特に親水性と景観に留意し、水辺に降りる階段をつけたり、護岸の方法にも工夫し、 さらに、柵の取り付け方などにも配慮するよう規定したものである。  (緑の保全と創造) 第九条 市、市民等及ぴ事業者の三者は、相互に協力して、歴史的文化遺産である掘割を 愛護し、掘割周辺の環境保全能力を確保するとともに、将来の世代に継承していくため掘 割周辺の植物及び雑木林、大木など緑の保全と創造に積極的に努めなければならない。 《説明》  本条は、市、市民等、事業者が協力して歴史的文化遺産である掘割を守り、これを将来 の世代に引き継いでいくために、掘割の周辺にあるヨシやコモ、雑木林、大木等をできる かぎり保全するとともに緑化に努めていくことを規定したものである。  (景観の保全と創造) 第十条 市、市民等及ぴ事業者の三者は、相互に協力して、水郷情緒に満ちた景観の保全 及び創造のため、次に掲げる行為に努めなければならない。  一 塀は生け垣で緑化するなど良好な景観を形成すること。  二 護岸をする場合は、可能な限り自然石による石積や詰め杭等を利用し、周辺を緑化 すること。  三 生活排水や事業所排水を掘割に排出する場合は、排水管を水面下に設置すること。 《説明》  本条は、掘割沿いとその周辺の景観について規定したものである。各号のことを努力規 定として挙げ、できるだけこのようなことに市、市民等及ぴ事業者が配慮しなければなら ないということを規定している。  (公共的施設の整備) 第十一条 市長は、下水道や水利施設の整備その他水環境保全に資する事業を推進するた め、必要な措置を講ずるものとする。 2 市長は、親水公園等公共的施設の整備その他の良好な水環境の創造のための事業を推 進するため、必要な措置を講ずるものとする。 《説明》  本条は、行政も公共的施設の整備等の際に率先して掘割の水環境保全に努めるというこ とを規定したものである。 流・排水施設とは、堰や樋管、樋門、水門、ポンプ施設等をいう。 親水公園等公共的施設とは、水辺の散歩道や水遊びデッキ等をいう。  (水環境管理体制の整備促進) 第十二条 市長は、水環境の保全及ぴ創造に関する施策(以下「水環境に関する施策」と いう。)を総合的に調整し、かつ計画的に推進するために必要な体制を整備強化しなけれ ばならない。 2 市長は、水環境に関する施策の効率的かつ効果的な推進を図るため、市、市民等、事 業者及ぴ民間団体が協働することのできる体制の整備に努めなければならない。 《説明》  本条は、今後水環境に関する施策を展開していくに当たって、今まで各部局がそれぞれ 展開していた施策の総合的な調整を図るために市内部での組織を作り体制を整備し、計画 的な推進を図ることを規定している。  また第二項では、市の内部組織の問題だけではなく、市民等や民間団体も含めて協働し ていくことができるよう用排水路管理委員会等を中心とした体制の整備に努めるというこ とを規定している。  (掘割を中心とする環境教育の振興) 第十二条 市は、市民等及ぴ事業者が掘割に対する関心を高め、水環境の保全についての 理解を深めるとともに、活動を行う意欲が促進されるように、教育及ぴ学習の促進を図る ものとする。 2 市は、特に児童及ぴ生徒に対して、掘割を中心とする環境教育及び学習を積極的に推 進するために必要な措置を講ずるものとする。 《説明》  本条は、掘割に対する市民の意識いわばモラルというものを再認識させることが掘割を 守っていくために重要との認識に立ち、市としてすべての世代にわたって環境教育の促進 を図っていくことを規定している。  第二項では、市は、特に未来を担う児童や生徒に対して環境教育、学習を積極的に行う ということを規定している。  (市民活動の推進) 第十四条 市長は、市民等及ぴ事業者が自発的に行う緑化活動及ぴ水環境の保全に関する 活動が促進されるように必要な措置を講ずるものとする。 《説明》  本条は、市民等や事業者が自ら積極的に緑化活動や水環境の保全の活動に取り組めるよ うに財政的、人的、物的支援など必要な措置を講じていくということを規定したものであ る。  (情報の提供) 第十五条 市長は、前二条の規定により、環境の状況その他の環境の保全に関する必要な 情報を適切に提供するよう努めるものとする。 《説明》  本条は、第十三条の環境教育の振興や第十四条の市民活動の推進が積極的に展開される よう水質検査結果や市の施策の実施状況、計画内容などの情報を提供するように努めると いうことを規定している。  (財政上の措置) 第十六条 市長は、良好な水環境に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講 ずるよう努めるものとする。 《説明》  本条は、市民や事業者が良好な水環境を保全及ぴ創造するために様々な施策を展開する に当たって、市としては必要な財政上の措置を講じるように努めるということを規定した ものである。  (関係行政機関との連携) 第十七条 市長は、良好な水環境に関する施策を推進するため、関係市町村との連携を図 るとともに、必要に応じ、国、県に対して協力を要請するものとする。 《説明》  本条は、柳川市は最下流に位置していることから、既に柳川市に入ってくる段階で汚れ ている水はどうしようもないので、上流域とも連携して広域的に水質の保全に努めていく ことを規定したものである。また、その際には、国や県に対してもさまざまな事業を活用 しながら協力を求めていくことを規定している。 第三章 審議会等  (審議会の設置及ぴ所掌事務) 第十八条 市長は、本条例の推進に関する重要事項を調査、審議するため、掘割を生 か したまちづくり審議会(以下「審議会」という。)を設置する。 2 審議会は、本条例の推進に必要な事項を調査、審議し、市長に提言するものとする。 3 審議会は、その所掌事務を遂行するために必要と認めるときは、市長に対し、資料の 提出その他の協力を求めることができる。 《説明》  現在、掘割に関する審議会関係としては、用排水路の管理に関しての「柳川市用排水路 管理委員会」や美観の保存に関しての「柳川市伝統美観審議会」を設置しているが、ここ で設置する「掘割を生かしたまちづくり審議会」では、この条例の中に水質浄化や景観を 保全していくための規定を掲げているが、こういうものの進み具合についてチェックして 、今後、よりよい方向に進むように審議し、掘割を中心にしたまちづくりを進めていく上 で市長に提言していくことができる審議会である。  (組織) 第十九条 審議会は、委員二十五人以内で組織し、委員は、次に掲げる者のうちから市長 が任命する。  一 学識経験のある者  二 関係行政機関の職員  三 その他市長が必要と認める者 2 委員の任期は二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 3 委員は、再任されることができる。  (会長及ぴ副会長) 第二十条 審議会に会長及ぴ副会長各一名を置き、委員の互選によって定める。 2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。 3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるとき又は会長が欠けたときは、その職務を 代理する。  (会議) 第二十一条 審議会の会議は、会長が招集し、会長がその議長となる。 2 審議会の会議は、委員の半数以上が出席しなければ開くことができない。 3 審議会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決すると ころによる。  (部会) 第二十二条 審議会は、必要に応じ部会を置くことができる。 2 部会に属する委員は、会長が指名する。 3 部会に部会長を置き、部会に属する委員のうちから互選する。 4 部会に関し必要な事項は、会長が定める。  (庶務) 第二十三条 審議会の庶務は、総務部企画財政課において処理する。  (委任) 第二十四条 この条例に定めるもののほか必要な事項は、市長が別に定める。 (施行期日) この条例は、平成十一年一月一日から施行する。